植物発酵産物のX線照射に対する防御効果
植物発酵産物のX線照射に対する防御効果
―小腸の腺窩再生に与える影響―
万田発酵株式会社1)、福島生協病院2)、広島大学原爆放射線医科学研究所3)
○芦田 貴行1)、明神 有紀2)、高垣 正博1)、松浦 良紀1)、渡辺 敦光3)
【目的】
現在の医療では、様々な目的でヒトに対する放射線の照射が行なわれており、検査・治療の過程で受ける医療被曝に対する関心が高まっている。これまでに幾つかの発酵食品には、X線照射に対する防御効果が存在することが報告されている。そこで我々は、健康食品として市販されている植物発酵産物のX線照射に対する防御効果について検討した。
【方法】
6週齢雄マウス(Crj:B6C3F1)に植物発酵産物(万田酵素®)を蒸留水で0.5%、1%ならびに2%に希釈し、X線照射前の1週間より屠殺時まで投与した。餌はオリエンタル酵母MFを与え、飲料水並びに餌は自由摂取させた。X線照射は4Gy/分の線量率で10GyのX線を全身照射した。X線照射3日後にマウスの小腸を摘出し、定法によってHE染色を行なった標本を作製し、顕微鏡下で再生している腺窩の数を測定した。
【結果】
摂水量は1%群で減少し、摂餌量は2%並びに1%植物発酵産物投与群で有意に減少した。X線照射した全群では、X線非照射群と比較して有意な体重の低下が認められた。また、非照射群でMF餌と2%の間には差は認められなかった。MF餌群では小腸輪切り当たり腺窩数が107±12個で、2%単独群では119±13個であった。一方、X線照射による小腸の腺窩再生率は、10Gy照射群で47±6個で、2%投与群では47±8個(100%)で、1%群では58±8個(123%)に増加し(p<0.01)、0.5%群では64±9個(136%)と増加した(p<0.01)。
【考察】
X線照射前の植物発酵産物投与は、マウス小腸の腺窩再生を促進し、X線照射による影響を軽減する効果が認められたが、高濃度投与では、反対に抑制されるという大変興味ある結果が示された。一方、魚類を用いた実験系において、本植物発酵産物の低濃度投与は、肝臓の抗酸化能を高め過酸化脂質量を減少させるが、高濃度では、その効果が抑制される事も示されている*ことから低濃度で充分放射線防御作用を発揮できる可能性を示唆している。抗酸化作用と腺窩再生との間の作用機序については今後の検討課題である。
【結論】
以上の事から、植物発酵産物の投与は、X線照射による小腸の腺窩再生を促進し、放射線障害に対する防御手段としての応用が期待された。
*Fisheries Science 2006; 72: 179-184.









